低浸襲の歯周治療を実現する超音波スケーラーについて理解を深める機会に
超音波スケーリングセミナーに参加して
溝口デンタルオフィス
歯科衛生士 立平 香奈江
さる5月11日(木)、東京都内にて(株)Up to You(加瀬久美子代表)主催 「道具を選べるプロになる!術者にも患者にもやさしい超音波スケーリング~錦部製作所 見学ツアー付~」が開催されました。
歯科衛生士ならば毎日あたりまえに使っている超音波スケーラーですが、チップの選択や操作方法など「自分は本当に正しく、効率的に使えているのだろうか?」と疑問を抱えていたとき、たまたまこのセミナーに出会い、「これだ!」と思い参加を決めました。
このセミナーは単に実技だけを学ぶのではなく、日本唯一の超音波スケーラーチップ専門メーカーである錦部製作所の工場見学ツアー付きという、今までにないとても珍しいプログラムで構成されていました。
午前の工場見学では、チップ1本1本が職人の手作業で作られていることや、思っていたよりも若い職人が多いことにたいへん驚きました。今までチップがどう作られているのか考えたことがなかったので、安価な汎用品が出回っているなか、「こちらの商品は純正品だから高いのだろう」という程度に思っていました。しかし、実際にお話しを聞くと、機械で大量生産している安価なチップは手作業で作っている純正品に比べると、性能面、衛生面、耐久性が劣るのだそうです。そして、このチップは極限まで効率化を図ったうえで歯石除去をするために、7年の月日をかけ、こだわり抜いて作られたとのことです。やはり価格設定にはそれぞれちゃんと理由があるのだとあらためて実感しました。錦部製作所の職人のみなさんは、直接かかわることのない患者さんのことを思い、自分の仕事に責任と誇りをもって、真剣に熱心に仕事に取り組んでおり、その姿勢が本当にすばらしく感動しました。この仕事や職場が大好きという雰囲気もひしひしと伝わってきて、そんな方たちの作ったチップを使えることが嬉しくも感じました。
その後の講義でとくに印象的だったのは、超音波スケーラーについて「振動の衝撃によって歯石を破壊する」のではなく「振幅の動きを利用し歯石を優しく除去する」と定義されていたことです。術者と患者さんにやさしい歯科器具作りにこだわっているからこその表現だなと思いました。この他、チップの振幅や振動、用途に応じたチップの選択やパワー設定など、チップを作っているプロの視点で学ぶことができました。
午後からは、今回の主催者でもある(株)Up to Youの加瀬久美子先生(歯科衛生士)より、低侵襲な歯周治療について学び、歯周組織の解剖やバイオフィルムの形成過程、歯周ポケットの意味や非外科による歯周治療の考え方について解説していただきました。初めて知ったことや一度学んでいるはずなのに忘れていることもあり、口腔内に触れるときは歯や歯肉の構造を考えながら、また患者さんに説明する時は今口腔内で何が起こっているかをわかりやすく伝えることが大切だとあらためて実感しました。これらを理解したうえで、超音波スケーラーを活用できるよう、うずらの卵や色を塗った缶を用いての実習も行われましたが、いつもの感覚でチップを当てると想像以上に振動して高音が鳴り響き、フェザータッチで歯面に正しく当てるには、やはり練習が必要だと感じました。
私と同様、遠方からの参加者もいて、幅広い年齢層のみなさんと楽しく受講することができて、とてもいい刺激を受けたとともに、歯科衛生士として誇りをもって働こうと勇気づけられました。これからもできる限り低侵襲でやさしい歯周治療ができるよう、今回学んだことを活かしていきたいです。